第1章 出会い

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(長くても三日……様子見て、熱が引いたら家に帰すか) こいつが何を恐れているのか、気にならないと言えばそれは嘘になる。 帰りたくない、と言うのなら無理に帰すのは良くないのかもしれない。 それでも俺には俺の生活があって、こいつの為にその何かを崩されるのはごめんだ。 こいつの問題は自分自身で解決すべきことで、俺が助ける義理もない。 いくら気になるからと言って、これ以上の関わりを持ってまで知りたい事ではなかった。 俺は自分に言い聞かせる。 他人と必要以上に深く関わるのは、あまり賢い生き方じゃない。 他人はあくまで他人。 それ以上の何者でもない。 (どーしても帰れないって言うんなら未成年だし、警察に連絡するっつー手もあるし) そんなことまで考えていたら、背後のベッドから突然詩の声が聞こえた。 「……い」 「あ、わりぃ。起こし……?」 毛布にくるまった奴は相変わらず眠っている。 ただ、あどけないその寝顔が苦しそうに見える。 「ごめ……なさい……」 夢でも見ているのか、それは俺に向けられた言葉ではなかった。 震えるように、小さく囁かれた言葉。 涙がつぅ、っと頬を伝う。 「ごめんなさい……」 悪い夢にうなされているのか、それとも……? 「詩?」 何を泣いているのか、俺には量りようもなかったが。 零れ落ちた言葉は苦しそうで、その涙は俺を不思議な気持ちに駆り立てた。 不思議な気持ち。 今まで他人に感じたことのない気持ち。 それは、好奇心とかいうものだったのかもしれない。 とても純粋に詩のことが気になった。 初めて、他人が気になった。
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