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ピピピピピピピ……
(うっせ……)
翌朝。
俺はベッドに寄りかかった体勢で目を覚ました。
目覚ましを止めついでに時間を見れば、十時半。
外はもう明るくて、近所のガキ共の声が響いている。
(背中痛ぇ……ってか何でこんな格好で寝てんだ?)
するとキッチンから
トントントントン……ジュー……ッ
という音がドア越しに飛び込んできて。
(由紀……?あ?ウチに連れて来たっけ……?)
昨夜の記憶があやふやで、由紀が遊びに来た覚えがない。
立ち上がると、背中から誰かが掛けてくれたらしい毛布がばさりと落ちた。
(……!)
反射的に(やらかした)と思った。
言っちゃ悪いが由紀はこんな気の利く女じゃないだろう。
また誰か女を連れ込んだらしい。
それにしては全然身に覚えがない。
(昨日は飲んだ記憶もないんだけどなー……)
低血圧で寝起きが悪く、全く頭が働かない。
(誰だ……?)
腑に落ちなくてキッチンに顔を出す。
「……あ」
「おっ、おはっ、おはようございますっ」
長い髪を一つにしばった詩がいた。
今の今までこいつの存在を忘れていた。
なるほど、昨日はソファで寝るつもりだったのが、結局ベッドの横で眠ってしまったらしい。
だんだん記憶が戻ってきて、酔って連れ込んだんじゃないと安心する。
もし酔った勢いで連れ込んで、あげくその事を憶えていないなんて言うと、女というのはやかましい。
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