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家に着き、濡れタオルをあてがうこと十分。
「ん……」
微かに呻いてそいつが目を開ける。
「あ、良かった。目ェ覚めた?」
声をかけた俺の顔をまじまじと見て、そいつは一瞬、ほんの一瞬だけホッとしたような顔をした。
だけどその顔は(何だ?)と思った次の瞬間には消えていた。
「ここ……?」
掠れた声で訊ねるそいつは不安げで、やっぱりさっきのは気のせいだったと思う。
「俺ン家。お前さっき外で倒れてたんだよ。寒いし、雨降ってきたからとりあえず避難。熱すごいけど……どーするよ、一応病院行っとく?夜間診療所ならどっか開いてるかもしんねーけど」
俺が問うと、小さく首を横に振り、ゆっくりベッドの上に起き上がる。
この様子なら、たぶん大丈夫だろう。
「…いいなら構わないけど。なぁ、それよりお前、歳いくつ?」
「十九歳、です」
どうしても「お前」と呼びかけてしまうのはこいつが幼く見えるからで、少し間を空けて返ってきた答えは読みとぴったりだった。
(十九ねぇ……七つ下。未成年だ)
「じゃあ親と一緒に住んでる?電話したら迎えに来るかな」
このお荷物を手放したい一心で充電しかけの携帯に手を伸ばす。
こんな深夜に電話するのも常識的にどうかと思うが、俺だって疲れてるんだ。
「お……や?」
やっぱ熱が高いんだろう。
焦点が合ってない。
「そう、親。未成年なんだろ?迎えに来るように電話するよ」
ところがパカ、と携帯を開くと。
「電話番号教え……」
「や……」
「え?」
ふいに腕を掴まれた。
携帯から顔を上げてそいつを見ると、顔面蒼白で。
「い、家は嫌です」
首を振って、弱々しく言う。
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