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無題(ギンヒツ)
静霊挺内の渡り廊下をゆったりと歩くは十番隊隊長日番谷冬獅朗
執務を終えて、気分転換にぶらり散策に出てきた。ついつい、仕事に励み過ぎて残業までこなし、時刻は夜半更け、当たりは静まり返って人気も当然無く遠くで鳥の鳴き声が聴こえるぐらいである。
この静寂に心安らぎ歩みを止め欄干に寄り掛かり、身を任せる。
しばらく、そうしていると、ふと見知った霊気を感じた。
近づく気に身動ぎせずいると、フワリと背後より己を抱き締める暖かな温もりを感じる。
「こないに冷えてまでここで何してはるん?冬?」
耳元に低音な独特声がスーと吸い込まれる。
自分の熱を与えるべく、より腕に力をこめる市丸に苦しいと絞り出す。
「あはは、すんまへんなぁ、あまりに身体冷たいから暖めてやろ思てん。
あっ、手っ取り早くここでヤるって手もあるな『バキッ』」
「この、万年発情狐め」
市丸の鳩尾に見事クリーンヒットに肘が当たった。ズルズルとかがみこみ、苦悶の表情の市丸に振り返り、ゆっくり近付き、目線を合わる
「でも、ありがとな」
頬に軽くキスを送りくるりと引き返した。
焦って駆け出す後ろ姿をニコリと笑む市丸であった。
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