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季節は初夏
真っ青な空が教室から見えた。
空調の利かない教室で生徒は皆、下敷で扇ぎ少しでも涼もうと努力している。
「授業中に扇ぐなよ…」
宮ちゃんが呆れながら注意するも、自分も出席簿で扇いでるため全く説得力が無い。
岸辺涼が転校して来て2ヶ月目のことだった。
「佐藤」
呼ばれてそっちを見ると宮ちゃんだった。
「なんですか?」
「ちょっと職員室まで来てくれるか?」
なぜ呼び出しをくらったのかわからなかった。
宮ちゃんのあとを追って職員室に向かう。
道中、色んな事を考えたが、思いつくものは一つもなかった。
「佐藤はさ、この進路で良いのか?」
職員室に着き、宮ちゃんのデスクに座り話を切り出されたのは進路のこと。
目の前に出された紙は第一志望のみ書かれた進路希望表。
第一志望は誰でも入れるような地元の普通高校だった。
「佐藤だったら、もっとレベルの高いところを狙えると思うんだが…。」
そういわれて出てきた感情は苛立ちだった。
「あたしはこの高校に行きたいんですが…。」
友達みんなはここを希望している。一人だけ違う高校に行くなんてごめんだ。
「…そうか。でも、考えてみてくれ。他にも色々良い学校があるから。…用事はそれだけだから帰っていいぞ。」
「…はい」
言われたことに反論することもできずに職員室を出た。
大人はずるい。
色んな話し方を知ってる。
間接的に自分の意志を伝えるすべを知ってる。
苛立ちは納まらなかった。
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