2009.1.17

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独りだった。孤独だった。誰もいなかった。この世界には私独りだけが存在していた。 時刻は夜2時30分。いつも通っている街をぶらぶらと散策しながらその事実に気が付いたが、夜2時だからという理由ではなく、本当の意味で私は世界に独りだけぽつんと残されてしまっていたようだ。 とにかく、寂れてシャッターが閉まってはいるがどことなく小洒落た商店街を独りぶらぶらと歩く。爽快な気分だ。 世界には私独りだけ。それがどういう事か? 自分の本能のままに暮らし、死ぬべき時に死ぬ。 具体的に言えば、食べたい物は好きなだけ食べられるし、欲しい物はいくらでも手に入れられる。好きな時間に寝て好きな時間に起き、好きなこ事に時間を使う。 食欲も性欲もない私には、好きなだけ睡眠を取ることが出来るのと、好きなだけ絵や音楽に打ち込むことが出来る事だけで心は十分満たされた。 いつかこの街を私の宗教画じみた絵で埋め尽くしてやるんだ。私の作った音楽を流し、私の作品だけの世界を作る。 目標が達成された所を想像して鳥肌が立った。その時の私の芸術を生み出さんとする心は底知れなかった。 何年経ったかわからない。何十年も経ったかも知れない。不思議と腹は空かず、たっぷり睡眠を取って起きたら芸術につぎ込む。そんな生活が続いていた。性欲など眼中には無かった。
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