『西暦3000年12月25日15時』

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宇宙開発センター内―― -第一会議室- プロジェクトの発表等、一番多く使用される多目的な部屋である その声はこの『第一会議室』から響いており、少し前から聞こえ始めた声が廊下へ響いていた 女 「一体どういう事なのよ、そんな事で『納得しろ』とでも言う訳!?」 『ちゃんと説明しなさいよ!!!!』 男1 「だからさっきから言った通りだよ『無理だ』って、こっちだって予定が無茶苦茶なんだぞ!?無理させてんのに分かんねぇ奴だな」 「お前さ『ロールアウト前』で整備途中の艦なんか発進させたって、すぐ撃沈(お)ちるだけじゃねぇかよ新型艦を壊す気か!?今は待機しろって」 女 「それは『やってみなくちゃ』分っかんないじゃん!!」 どうやら出撃するのに『新型艦』で出たがっている女性士官を、顔馴染みの上官に止められて口論になっている様だった 普通ならロールアウトは様々な実戦テストを経て、配備部隊の決定後に観艦式等お披露目会があるもの、だから整備もそこまで慌ただしくはないはずである それを上官命令で急がせて無茶をさせ……それなのに早く出撃させろと急かされては頭を抱えるしかないが、今の状態で出せば整備不良で撃沈する未来しかない だからこそ、女性士官の言動に――― 男1 「やっぱお前、馬鹿だろ『試す価値』もない」 女 「んなっ……ば、馬鹿とは何よ『バーカバーカ!!』」 子供の喧嘩にしか聞こえない声は、行き交う人々を自然と立ち止まらせて『こんな時に何やってんだ!?』と様子を伺って集まった人達で『火事場の野次馬』と化した そこへ『急ぎ足の男』が野次馬を避けて入って来る 男2 「遅くなりました艦長、やっぱり『この雪』じゃ艦の発進は無理ですね~止む気配もないですよ」 扉を開けたままで話しているからだろう、廊下に集まった野次馬達が一斉に部屋の中を覗き込み始めた 駄々を捏ねるお子ちゃまは誰かいなと興味津々、大方の予想はつくのに現物を見ずにはいられないそれは『野次馬の性』である
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