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隣のクラスの彼に、思いを馳せている内に授業開始のチャイムが教室に鳴り響く。
体育が嫌いな生徒なんて僕ぐらいで、クラスメイトはさっさと着替えて校庭のグランドに向かった。
教室にはボク一人──。
「急がなきゃ…」
一人呟き、シャツに手をかける。
誰も来ないと思って一気に上着を脱ぎ捨て、上半身を温かな空気に晒す。
今は皐月──春が過ぎれば夏まであとわずか。
来年の今頃は卒業して彼とまったく接点がなくなる。だからこそ今の内に何か思い出を作りたいなぁなんて考え事をしてしまい、ふと掴んだままの体操着に気付く。
「…やばッ!遅刻する」
まだ着替えも終わってないというのに何のんびりと考え事をしてるんだろう。
自分に叱咤しながら首に体操着を活きよいよく、バフッとかける。
──ガラッ
……ん?
教室のドアが開く音がして、首にかけた服を戻し入口へと目を向ける。
そこに居たのは着替えが遅くなってしまった原因の彼だった──。
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