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和式便所に敷きつめられた、汚れたタイルの角に腰を下ろし、小便跡も気にせずに両の足を投げ出して、タバコに火を点した。
彼は独りで、じっと考えた。タバコの替えが尽きるまで。目を閉じれば、瞼の裏にさっきのサイドミラーの光景が焼き付いている。歪んだ銀の自転車、顔は見えなかったが、髪は長めだったように思える。ならば、女子学生だろうか。大丈夫だろうか。……いや、もし老婆だったら? あんなに歪む程の事故で、怪我一つ無いなんて……
突然けたたましい着信音が鳴り響き、それは便所じゅうエコー掛かって、充を慌てさせた。
「もし、只木さん。どうです、当たっていたことでしょう? 貴方は確かに、患っていらっしゃる」
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