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「お姉」
私は、たった一人きりの姉を慕い、この田舎町まで帰って来た。
「甘ぁい千代菓子だよ」
数年振りに会う姉は、あんなにふくよかだったのに、痩せっぽちで、骨筋張っていて、部屋の隅っこの箪笥にもたれ掛かり、黙って、胸が少しはだけていた。
「あとで、夜が更けたら、散歩に出ようね」
姉の胸元へんで安らぐ赤子を、飴細工を運ぶみたいに、そっと腕に譲り受けた。
子守唄、カシリカシリ、ゆうら揺ら。
ピィ、ピィ、ヒィヤラヤ。
六畳の部屋には、最後の乱痴気騒ぎみたいに、赤子のちびな服が散らかって匂っていた。
了。
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