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「只木さん? あの、眞鍋ですが」
「……ああ、眞鍋先生か。この間は面白半分で精神科へ寄っただけだよ。気に留めないでくれ」
暫く沈黙のあと、眞鍋医師は諭すように言葉を続けた。
「面白半分だなんて。貴方は心を病んでいるように思われます。只木さんがおっしゃっていたこと、それから癖になっている仕草などから総合的に判断しますと、強迫性他人のせいで病、だと思われます」
充は噴き出し、煙りの逆流で烈しく咳き込んだ。
「強迫性他人のせいで病? 何処のヤブ医者だ? 聞いたことも無い、と言うか病名に助詞を付けて文章にするな!」
「いえ、冗談などでは有りませんよ。貴方以外にも大勢のかたが患っていらっしゃいます。先月の医師会でも中心的なテーマでした。中でも只木さんは重度の患者さんと思われます。明日は私、本来休日なのですが、只木さんがよろしければ診察や新開発の特効薬をと……」
充は電話を切り、充電器の線ごと助手席の足元へ投げ付けた。
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