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この命が果てるまで
ある男が崖の上から自殺しようとした時、25歳ぐらいの男の人が彼の命を救った
「お前、なぜ死のうと思ったんだ?」と男の人は聞いた。
だが、男は答えなかった。
「別にいいんだ。今日は、オレの家に泊まるといい。お前は、力がありそうだなぁ。しばらくの間漁師やってみないか?」と男の人は聞いた。
男はうなづいた。
男は、漁師やってみて、すっごく楽しくなってきた。
だんだんと男の人に話すようになった。
ある日、男は「俺は、大事な人を失しない。仕事もうまくいかなくなった。
何もかも嫌になったんだ。本当にあんたに助けてもらって良かったよ。漁師の仕事がこんなに楽しいとは思わなかった。本当にありがとう。」と言った。
男の人は「実は、俺も自殺しようと思った時にこの村の漁師のじいさんに助けれたんだよ。そのじいさんは、俺に言ったんだよ。優しい声で。わしは、戦争中、大切な友人や家族そして、愛しきあの人まで…愛しきあの人を抱き締めてあげたくっても、抱き締められないだ。わしは、大切な人を失った悲しみがこれほど辛いという事を沢山、知ってしまった。命は大切なんだ。お前もそのうち分かる時がくるよ」
その時、俺は、そのじいさんから「生きて頑張れ」って言われた気がしたんだ。
男の人は話を続けた。
「そのじいさんは、先も言ったんけど、戦争中に彼女を失ってしまったんだよ。生涯で愛した人は、彼女だけだから誰とも結婚しないで一人で暮らしてきたんだそうだよ。そのじいさんは去年、愛しき人の所へ亡った。俺は、じいさんの後を受け継いで漁師になったんだ」と言った。
この話を聞いて、男は思った。
俺の投げだそうとしてた命は、こんなに価値があるものだという事を今さら気付いた。
なぜ、こんなに大切な物を感情のままに投げ出そうとしていたのか?
俺は死ねば楽になると、ただ思っていた。
しかし違う。
自分から逃げているだけなんだ。
人生は楽しい事もあるし、悲しい事もある。
でも、生きなければならないのだ。
自分の意志と反対に命を奪れた人の為に…
その人達が命の重さを俺に教えてくれた。
だから、俺は生きる
この命が果てるまで…
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