ある夏の物語

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『かずお!!』 ある青年が病室で大声をあげた。 『かずお!!死ぬな!!俺との約束…破るつもりかよ!!!!かずお~~~!!!!!!!!』 ……かずおと呼ばれた青年は17歳という若さで息を引き取った。 ここからさかのぼること1年前、ある青年とかずおは部羅汁高校の体育祭で2人3脚で出場した。結果は惨敗。 『かずお~、負けちまったなぁ…』 『泣くなよ、次郎ちゃん。来年があるだろ!?来年は3年で最後だし、輝かしく1位をとって卒業しよう。』 二人は昔からの親友同士だった。かずおの最期まで二人は何をするにも一緒に行動していた。 『じゃあかずお…来年こそは優勝だな。』 『ああ、約束だ!もう泣くなよ?泣き虫くん』 『うっせぇ…』 この二人は何をするにも一生懸命で、もちろん体育祭にも一生懸命だ。だから負けると悔しくて次郎は泣いてしまう、それをなだめるかずおであった。 高三の春、かずおは病に倒れた。次郎は毎日お見舞いに行き、心配そうにかずおを眺めていた。 一度、復帰するもだんだんと具合が悪くなる。あきらめてまた入院。 かずおは、 『俺は大丈夫だから、次郎ちゃんは2人3脚の練習でもしててよ。もうすぐ体育祭だろ?』 頷く次郎がハッとして、 『バカか?2人3脚をどうやって一人で練習するんだ?』 かずおは笑顔で 『あはは、それもそうだな。』 こんな日が続き、体育祭の日が近づいてきた。次郎はかずおの病院に行き、かずおの主治医にこう言った。 『先生、もうすぐ体育祭が始まります。それまでに退院できませんか?』 主治医は沈黙を続けた後、目を合わせずにこう言った。 『残念だけど、もうかずお君は治らない、治療法が今の医学では見つからないんだ…』 次郎は 『そ、それじゃああいつは死ぬまで病院暮らしなんですか!?』 主治医は頷く。 『………そうですか。』 次郎は顔を地面に向けた、必死に涙をこらえながら…次郎は顔をあげ、 『どうせ治らないんだったら…2人3脚…一緒に走らせてください。』 主治医は 『ダメです。心臓に大きな負担がかかりすぎます。早死にさせたいのですか?』 次郎は、走ってかずおの病室へ。 『おぉ次郎ちゃん!待ってたよ、ん?泣いてるの?』 次郎は 『泣いてない!ん、何持ってるの?』 かずおは手に持っている物を次郎に見せながら 『ビデオカメラ~!ほら、俺このままだと退院待たずに体育祭始まっちゃうからさ、2人3脚も誰か代行してもらってさ…一位をさ…』
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