ある夏の物語

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かずおは泣き出した。 『俺、こないだ聞いちゃった…治らないんだって親と先生の会話、聞いちゃったんだよ。もう…治らないんだってさ!』 かずおは泣き続ける。次郎は 『か、かずお…』 しばらくして次郎は 『かずお、早死にしてでも…体育祭に出ないか?』 かずおは泣きやんで 『どういうこと?』 『先生にちゃんと許可もらってさ、一緒に体育祭出ない?』 かずおは、笑顔で 『ずっと病室で長生きするより、何か記録を残して死ねるなら、出たい出たい!!』 次郎も笑顔で 『本当に!?よぉし!!じゃあ早速先生に聞いてみよう!』 二人の猛アタックによって先生、そして両親の許可を得た。 そして体育祭前日。 次郎はかずおにまた明日と別れを告げ、帰路についた。 『明日、一位とれるかな…いやきっととれるぞ、なんたってかずおとずっと共にしてきた最強コンビだからな~』 次郎は一人ぶつぶつと言っていたため、周りから白い目でみられていた。 次の日、待ちに待った体育祭、種目の順番もかずおがきたら実行というカタチにしてもらったが…かずおは朝からくると言っておきながら昼過ぎてもこない。担任が次郎に 『かずお、急に病状が悪化してこれなくなったと。お前、一緒にくるか?』 次郎は嫌な予感がした… 病院につき、走ってかずおの病室へ行った。 かずおのベッドを悲しそうな顔をした大人たちが囲んでいた。次郎はかずおに近づいた。 かずおは息をしていなかった。 『か…かずお?』 主治医は 『残念ですが…』 とかずおの両親に告げていた。 次郎は泣きながら 『かずお!おい!起きろ!起きろよ!今日体育祭だぞ!一緒に走るんだろ?!起きろ!』 何度呼びかけても反応はない。かずおは死んでしまったのだ。体を揺さぶる次郎。 『一緒に…一位とって…記録残す前に死ぬな…死ぬなよぉ~!』 次郎はもうダメだと座り込んだ。 『今までかずおと仲良くしてくれてありがとうね。』 かずおのお母さんはそう言って、泣いた。 『かずお…』 号泣する次郎の頭に呼びかけるようにかずおの声が聞こえる… 『次郎ちゃん、俺の分まで頑張ってくれよ』 次郎はふと立ち上がる。担任に 『先生、体育祭戻って2人3脚走らせてください。当初の予定の代行使って』 そう言って、かずおに借りていたビデオカメラを担任に渡し、これで撮ってくださいと次郎は言った。
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