桜と木蓮

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 みずみずしい色の花を咲かせた木がおりました。  その花の、枝についた様子はまるで、ほのかに甘く味つけをした米菓子のようでした。小さな子供が駄菓子屋などで時折買って食べているでしょう、あの米菓子です。  枝の先の方へぽつぽつとついた花、こちらは桜色のこんぺいとうのようでした。  しかし、私が今花の様子を菓子に喩えたのは、それは見た目のことでして、もしも本当にあの小さく細い木についた花たちを食べたとしたら、花は口の中でとろりと溶けて、桜色のさわやかな甘い汁になるような気がいたします。  あの細い木は、まるで若々しい少女のように見えました。  桜の少女は、みなさんが春になると大勢で酒やら弁当やらを持って、喜んで出かけてゆくような、桜並木のたくましさはありませんが、しかし華奢な体に懸命に花をつけている様子は、却ってその姿を目にする人が、思わず微笑んでしまう可愛らしさがありました。
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