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さて、桜の少女のおります裏庭から、民家やら作業場やらをいくつか挟んだところでは、木蓮のお姉さんが、見事な花をつけて、誇らしげに立っていました。
木蓮のお姉さんは、それは立派な、濃い色の花を枝いっぱいにつけて、着飾っておりました。
木蓮のお姉さんときたら、背も高く、本当に大人びて美しく見え、このお姉さんと比べると、可愛らしい桜の少女の淡い花びらは霞んでしまうようでした。
桜の少女にもそれはわかっておりましたので、木蓮のお姉さんに向かって何か言うということもなく、お姉さんが美しいお花を皆に見せているのを邪魔しようということもありませんでした。
桜の少女は、お姉さんの邪魔にならない場所で、控えめな様子で花を咲かせていました。
一方お姉さんはといいますと、桜の少女のことなどとるに足らないといった感じで、少女の方へ目をやることもありませんでした。
お姉さんは、自分の成熟した美しさに酔いしれるのに夢中で、他のまだ未熟な木や花を気にかける暇などなかったのです。
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