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桜の少女は奥ゆかしい性格でしたので、木蓮のお姉さんや、他の木と張り合うようなつもりは全くありませんでした。
ただ、自分のできる限りの淡い花を、懸命につけて立っていました。
しかし実はその様子が却って、華やかな木蓮のお姉さんよりも、人の目を惹きつけました。
家の裏の道をゆく人は、思わず立ち止まり、慎ましやかに咲く桜の少女を、しばらくじっと眺めるのです。
裏の道は、舗装もされていない砂利道でしたし、通る人もあまり多くありませんでした。
裏の道をゆく人は桜の少女と木蓮のお姉さんに目をやっては、
「やあ、あちらの木蓮は誰が見ても文句なしに見事なもんだが、こちらの桜の可愛らしさときたら、敵わないなあ」
などと呟いて、通り過ぎてゆきました。
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