8890人が本棚に入れています
本棚に追加
「私がダイヤを口に含んで、グラスに移したことに、気がついてたのね」
モニターには、ブラックチップに唇を寄せる寿久子が映し出されていた。
「三戸は、リタイアしたあと、お孫さんと遊ぶことを、何よりも楽しみにしておりました。今回の件で、それは先延ばしになりましたが、あなたはこういう結末を望んでおられたのですか?」
「あんな素敵な人を、お孫さんだけに独占させておくのは、もったいないわ。ほんとうの宝物は、みんなに愛されてこそ光り輝くもの。そう思わなくて?」
「やれやれ、わがままなお客様が多くて、ホテルマンは気苦労がたえませんよ」
「だから、私、このホテルが大好きなの」
虹山は、BOSSレインボーマウンテンを二缶だして、寿久子にもすすめた。
壁のモニターには、孫を抱きかかえた三戸の笑顔が映し出されている。
「BOSS HOTELの ほんとうの宝物に乾杯」
ふたりは、老ドアマンに敬意を表して、芳醇なコーヒーをかたむけた。
最初のコメントを投稿しよう!