第二話「秘密を知るもの」

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「ふぅ」   緊張がとけると、無意識にため息が漏れる。   「なんか、バカバカしくなってくるなぁ」   カジノには、普通の人間が一生かかっても手にできない金額を、一夜の遊びに費やすセレブたちがたくさんいる。   そんな光景を二十代の若さで毎日見ているのだ。   それだけではない。   優秀なディーラーは、そのスキルで大きな収入をカジノにもたらす。   山口ひとみも、ホテルには、かなりの貢献をしていた。   「もうちょっと給料をあげてくれても良いはずだよ。それだけの仕事はしているんだから。いっそ歩合制にしてくれないかなぁ」   愚痴りながら派手な制服から、穴のあいたジーンズに着替える。   「今に見てなさい、私がどれだけこのホテルに必要な人間かってことを、支配人に思い知らせてやるんだ………………」   山口ひとみは、うっかり口に出てしまった心の声を慌てて飲み込んだ。   誰かに聞かれなかったか、周りをみまわし、ロッカルームが無人なのを確かめると、   「あぶないあぶない。口は災いのもと。どうしても早くお金が欲しい理由は、秘密にしておかないと…」   山口ひとみは普段、誰にも見せたことがない不敵な笑みを見せた。
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