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不可解な手紙のことが気にはなっていた虹山だが、そのまま7月7日を迎えることとなった。
警察に相談しようにも、現実に事件が起きたわけでもなく、また、セレブな客ほど警察の気配を好まない。
それに、カジノのセキュリティには十分な自信を持ってもいた。
虹山は、当日のミーティングで、初めてスタッフに手紙の存在をあかした。
「実は十日ほど前に、こんな手紙が届いた。誰かのイタズラだとは思うのだが………」
手紙のコピーを手にしたスタッフは、
「このホテルいちばんの宝物?」
「アニメかコミックの見過ぎだよ」
「負けがこんでいる客の嫌がらせに決まってる」
「字が汚くない?」
「ボス、こんなのにまじめに取り合ってたら、仕事になりませんよ」
などと、本気にする者は、ひとりもいなかった。
しかし、虹山は厳しい口調で、スタッフをいましめた。
「今日は、普段よりも多くのお金が動く。大切なお客様も、大勢お見えになる。失礼のないよう、気を引き締めてがんばってもらいたい」
虹山が心配するのにも理由があった。
今日一日分のカジノの収益は、全額チャリティーに寄付することになっており、上客のセレブたちにも協力を求めていたのだ。
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