第四話「オッズテーブル」

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ボールは『赤の14』に落ちた。   「勝負の女神は、寿様に微笑んでいるようですね。すこし、おやすみになりますか?」   柳原がスナックを勧めたが、   「いいえ、今の運を逃したくはないの」   寿久子は闘志をたぎらせ、次の勝負を待っている。   山口ひとみが、ルーレットのホイールを回し、「ネクスト・ゲーム」を告げた。   ディーラーは、笑みで感情を覆い隠す訓練をしているが、寿久子は、笑顔の奥を探る視線を、ボールを操るディーラーに向けた。   (次はどちらに落とすつもりなの?)   ボールを手放す直前まで、山口ひとみの指先には、かすかな躊躇があった。   乾いた音とともに、ボールがルーレットに飛び込んだ。   すぐさま反応した寿久子は、手に一枚だけ持っていた最高額のチップに熱くキスして、ベットテーブルに弾いた。   緩やかな円弧を描いたチップは、二倍返しのゾーンに転がった。   「二度あることは、三度あるはずよ」   そう言うと、残ったすべてのチップを、投げたチップの上に積み上げた。   寿久子が選んだのは今回も『赤』だった。   他の客も、彼女の勢いに便乗しようと、赤の場にダイヤが集中した。
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