第五話「機転」

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カジノには無数の監視カメラがセッティングされて、各テーブルの様子をすべて記録している。   「ボス、モニターのプレビューを、お願いします」   柳原は、虹山に無線で問いかけた。 支配人室にいる虹山が、録画された映像を巻き戻した。大急ぎでチェックしても、ダイヤのありかはわからない。   本来カメラの記録は、客や従業員がゲームで不正を働く事をチェックするためのもので、小さなチップに埋め込まれた、さらに小さなダイヤまでは追い切れない。   チップはカジノで換金して、はじめて価値がある。 チップその物には大きな値打ちがないのだ。 チャリティー演出のために、今日だけ使ったダイヤモンドのチップは完全な盲点だった。 手にするのは、身元のしっかりした、上客のセレブリティのみという安心もあった。   「そうか……いちばんの宝物とはこのことだったのか…………」   黒のチップは、このカジノでいちばん高額なチップだったのだ。   虹山は服装を整え、事件のあった特別室へと走った。   異常を察した他の客たちが、特別室を遠巻きに囲んで、何やら、ひそひそと話をしている。   「失礼いたします」   客をかきわけ、部屋に入る。
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