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カジノには無数の監視カメラがセッティングされて、各テーブルの様子をすべて記録している。
「ボス、モニターのプレビューを、お願いします」
柳原は、虹山に無線で問いかけた。
支配人室にいる虹山が、録画された映像を巻き戻した。大急ぎでチェックしても、ダイヤのありかはわからない。
本来カメラの記録は、客や従業員がゲームで不正を働く事をチェックするためのもので、小さなチップに埋め込まれた、さらに小さなダイヤまでは追い切れない。
チップはカジノで換金して、はじめて価値がある。
チップその物には大きな値打ちがないのだ。
チャリティー演出のために、今日だけ使ったダイヤモンドのチップは完全な盲点だった。
手にするのは、身元のしっかりした、上客のセレブリティのみという安心もあった。
「そうか……いちばんの宝物とはこのことだったのか…………」
黒のチップは、このカジノでいちばん高額なチップだったのだ。
虹山は服装を整え、事件のあった特別室へと走った。
異常を察した他の客たちが、特別室を遠巻きに囲んで、何やら、ひそひそと話をしている。
「失礼いたします」
客をかきわけ、部屋に入る。
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