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「皆様に、お飲物をサービスさせていただいては、いかがでしょう」
三戸が、客にも聞こえる大きな声で言った。
「そうだね。ひとまず喉をうるおしていただこう」
客から飲みかけのグラスが回収され、新しいドリンクが配られた。
「ここのお客様が、10万ドルほどの金額で犯罪に手を染めるはずもありませんよ」
三戸が、虹山に耳打ちした。
この部屋にいるセレブ達は、カジノで一夜にしてそれ以上の額を失っても、何とも思わない資産家ばかりなのだ。
(だとすると、スタッフが……)
ほんの一瞬だが、虹山は部下に疑心を抱いた。
「手際の悪いのは、お許しいただきまして」
三戸はゲストから回収した飲みかけのドリンクを、ガラスでできたアイスペールにひとまとめにしてマドラーでかきまぜた。
「何をするつもりかね」
虹山の心配をよそに、三戸が色付いた液体をアイスペールごと高く掲げて、まばゆいカジノの照明にかざした。
すると……………………
キラリ、
アイスペールの底に、小さな光が生まれた。
屈折率の近いカクテルのなかに身を潜めていた大粒のダイヤモンド。しかし、強い光にはその輝きを隠しきれず、カジノの照明を虹色に変えて返していた。
客から感嘆の声があがる。
「たいへんお騒がせいたしました。捜し物は、このとおり見つかりました。どうぞ、引き続き楽しい時間をお過ごしください」
虹山がわびた。
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