梶野アキ

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「アキ、教科書忘れたから見してくんね?」 隣の席で優がへらりと呑気に笑っている 優は俺が春のいとこだということを知らない 優だけでなくこのクラス生徒、いやこの学校の生徒全員知らないだろう それは春から秘密にするようにと言われているから 「また?いい加減自分の持ってこいよな」 だから、このモヤモヤした子供じみた感情を誰にも話せない 話す気もないけれど 「だーって、なくしたんだよ教科書」 「2年のになって数日もしてないのになくすアホいるかよ」 「あはは、ここにー」 悪びれた様子もなく自分を指差しながら笑う優 俺もつられて笑う そんなアホな会話をしていると、ガラガラと教室のドアが開く音がした  
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