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「何、泣いてるんだ!?」
許が珍しく瞳を見開き、俺をのぞき込んでくる
泣きたくもなる
今日は2月14日
聖ヴァレンタインデー
恋人同士が楽しむ甘いイベントのひとつ(俺認識による)
なのに、いつもと変わらない展開
「俺って許にとって何?」
胸の奥につかえていた気持ちを吐き出す
一度溢れ出した気持ちは止めどもなく、普段なら口にしない言葉を俺は次々と紡いだ
「何って――」
「……おかしいよ」
「おい、少し落ち着け」
「落ち着いてるよ!」
「声を荒げて言う台詞か?」
許はやれやれといった風情で、大きなため息を吐く
その態度が、更に俺の苛立ちを募らせる
子供みたいだってわかってる…
でも理性は冷静さと共に吹き飛んだ後だった
「許は俺様で、自己中で……俺が嫌なことばかりするサイテーなやつだ」
「ヒドい言われようだな」
「事実だろ」
「事実ねえ~」
「何だよ!」
「いや、別に。兎織がそう思ってるなら……そうなんだろ?」
冷めた眼差しが俺を見つめる
唐突に抱きしめられていた躰が解放され、突き放された
「あっ」
離して欲しいと願ったはずなのに、乱暴に突き放された瞬間、残念そうな声が漏れた
互いの温もりの名残さえ、徐々に失われていく
俺はどうしたいんだろう?
自分の心さえ見えない
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