チョコ味の××

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「許、待てよ」 俺の声は虚しく響く 許はやはり振り返ることなく、その背中だけが遠ざかっていく 「待てって言ってるだろ!」 俺は更に声を荒げた もう周りの目だとか、気にしていられない 「いい加減こっち向けよ!!」 俺はぶら下がらんばかりの勢いで、筋肉質なその腕に掴み掛かった 「うるさい…そんな大声ださなくても聞こえている」 「聞こえているなら、こっち見ろよ」 いつもとは反対に、俺は強引に許を振り向かせた 互いの視線がかち合う 俺は真っ直ぐ、許の切れ長の双眸を見つめ返す 許は無感情に俺の動向を窺っているだけで、何を考えているのか読むことはできない だが、そんな事で挫けるほど俺の決心は弱くない 拳を更に握り込み、緊張でからからに渇いた喉から声を絞り出した 「これ受け取って欲しいんだ!」 差し出した手に乗っていたのは、ポケットにしまっていた所為で不格好に潰れた包装のチョコレート 「……うそ。せっかく昨日頑張ってラッピングしたのに」 昨日はそれなりに見られたチョコだったのに、俺は目の前の惨状に言葉を失った 「そういうことか」 許は躰の力を抜くと、俺の手の上のクシャクシャのそれを取り上げる
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