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「え、それだけ?」
「他に何か言うことがあるのか?」
予想以上に薄い反応に、心はしぼんでいく
喜んで欲しいというのは、俺の勝手な思いかもしれない
でも―――これは堪える
喧嘩なんかしなければよかった……
喧嘩する前の許なら、喜んでくれた?
そう思った途端に、ぽろりと涙が零れ落ちた
どうして泣いているんだろう
これで俺は、この不毛な関係を終わらせることができるじゃないか!
それはとても喜ばしいことだ
もうひとりの俺が嬉々と叫ぶ
――そんなの嘘だ
「……ごめんなさい」
するりと言葉が滑り出る
あまりにも自然に出た言葉に、俺自身が驚いて固まってしまう
困惑した俺の目に映ったのは、許のニンマリとした勝ち誇った笑みだった
「え?」
「兎織は本当、騙されやすいな」
「どういう意味だよ?」
「言葉通りの意味だけど」
許はくくっと愉しげに笑いを漏らす
俺はその言葉の意味を理解できず、呆然と許の一挙手一投足を見守るしかない
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