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僕はビクッとして手を引っ込めた。
恐る恐る振り向くと全身白い布の服で身を包み、同じく布で出来た帽子(というかはわからないが)を目深に被り、口元も布で隠した男が立っていた。
最早かろうじて見えているの目だけだった。
「このラクダは僕以外なついていない。怪我をするかもしれないから触ってはいけないよ。」
男は先ほどの声とはうってかわって優しく促した。
ゆっくり僕の方へ近づいて来てすぐ前に立った。
「目が覚めてよかった。もう少し遅ければ死んでいたかも知れないからな。」
僕はハッとしてお礼を言った。
「あなたが助けてくれたんですね。ありがとうございます。もう駄目だと思ってました。」
僕が言うと男は目がフッと和らぎ無言で手を差し出してきた。
僕は笑顔でその手を握り返した。
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