スカウト

2/2
前へ
/4ページ
次へ
その夜― 早めに帰宅したユウはずっと名刺のことが気になっていて、裏の番号に引き付けられるように電話をした。 ―▲△プロデュース― 紺藤 貴志 聞いたことも無い会社の名前で、住所は隣の田舎町だった。 「あ、もしもしー?」 昼間の茶髪の男の声がした。何やら周りががやがやしていて雑音が聞こえて来る。 「あの…昼間名刺もらったから電話してみたんだけど」 ユウが答えると男の声が急に明るくなった。 「電話してくれたんや~ほんまありがとうな!」 男は忙しいのか、早口で一気に喋り始め、自分がキャバクラのスカウトで声をかけたことを端的に話した。 ユウは男の強引なペースと聞き慣れない関西弁にうなずくことしか出来ず、明日体験入店に行くことを約束してしまった。 でもユウには後悔の気持ちは不思議と言う程全くなかった。あまり深く考えていなかったが、ただ吸い込まれる様に、何だか可哀相な自分に手を差し述べてくれた様なそんな気持ちだった。 それに今まで見たこともない新しい世界に足を踏み入れる様でユウは胸を踊らせていた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加