🌷第1回小説選手権🌷

6/9
前へ
/10ページ
次へ
  『やっぱり大切な人だから…』   作:淋(りん)     「政彦なんか大嫌い!!」 そう言って飛び出して数時間… 政彦は、びしょ濡れになっている私を追いかけては来ない。   分かっていた政彦が私に愛想を尽かしていたのは。 でも、本人にはっきりと 「お前、なんかウザイ!もう嫌いだから別れる!」 なんて、簡単に言われたら涙が止まらなくなってきて、つい家を飛び出してきてしまった。   ザー…と激しい雨が降り冷えた身体はまるで死人のよう…いや、もういっそ、雨と一緒に流れて消えたいと思う。     「華っ…」 そんな時そう私の名を呼んだのは、ついさっき私と喧嘩した彼だった。 彼は、私と同様びしょ濡れで、顔には申し訳なさそうな表情を浮かべ立っていた。   「政彦…」 そう私が呟くと彼は泣きながら私にかけよって来た。     雨が降る夜、私たちは、強く抱きしめ合ったのだった。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加