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『やっぱり大切な人だから…』
作:淋(りん)
「政彦なんか大嫌い!!」
そう言って飛び出して数時間…
政彦は、びしょ濡れになっている私を追いかけては来ない。
分かっていた政彦が私に愛想を尽かしていたのは。
でも、本人にはっきりと
「お前、なんかウザイ!もう嫌いだから別れる!」
なんて、簡単に言われたら涙が止まらなくなってきて、つい家を飛び出してきてしまった。
ザー…と激しい雨が降り冷えた身体はまるで死人のよう…いや、もういっそ、雨と一緒に流れて消えたいと思う。
「華っ…」
そんな時そう私の名を呼んだのは、ついさっき私と喧嘩した彼だった。
彼は、私と同様びしょ濡れで、顔には申し訳なさそうな表情を浮かべ立っていた。
「政彦…」
そう私が呟くと彼は泣きながら私にかけよって来た。
雨が降る夜、私たちは、強く抱きしめ合ったのだった。
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