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庭に出た信勝は、
「父上は本気だったのですかね?」
と昌信に聞いた。
「勝頼様は、亡き信玄公から当主は譲られませなんだ。陣代として生きろとの仰せで御座いましたから、本来ならば当主に就かれてもおかしくはなかったのですからな。その辺があったのやも知れませぬな。」
昌信が語った。
「考えて見れば、父上も哀れよな。当主であったならば、違っていたかも知れぬな。」
信勝が言った。
「亡き信玄公が附けられた大炊助、釣閑斎は共に文官の者、どちらか一人が武断の者でしたらまた、違っていたやも知れませぬ、あの折りには、まだ義信様がご健在でしたから、まさか、あの様な事が起こるとは、亡き信玄公様ですら思ってもおりませんでしたから。」
昌信が遠い記憶を思い出しながら言った。
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