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私が入居した寮は、出来たばかりの新しい寮だった。
私は4月に入ってから上京した。
入居したのは入学式の3日前。 たった1人で上京して、たった1人で寮に向かった。
その寮は、23区外のいわゆる「市」にあった。
生まれて18年、ずーっと実家のある福岡から出たことがなかった私は、初めてこの地に来た時びっくりした。
初めて見た東京は、想像とはかけ離れていた。
寮に着いた私を、寮長夫妻が出迎えてくれた。
私は、自分の靴箱に案内されて、自分の部屋に案内されて、荷物を置いたあと、寮長室に呼ばれて、たった1人のオリエンテーションを受けた。
寮長は私を見て、にこにこしながら
「キミは…まさか脱走とかはしないだろうね?」
と言った。
「そんなふうに見えますか」
「キミは…福岡で鳴らしたほうだろ?まあ、ここの規則は厳しいから、どれくらい堪えられるだろうね」
失礼な。
脱走なんかするもんか
厳しい規則?
上等だよ
と、思っていた。
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