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1章 日常
――キーンコーンカーンコーン
「龍乃、お昼行こう」
少女が龍乃に言う。
赤の強い茶髪を肩までのばし、お洒落なヘアピンやネックレス、右手首には四本のブレスレットを付けている。四本のブレスレットをまとめるかのように赤い宝玉が付けられている。
少女からは、明るい印象を受けるが派手過ぎることはない品位がある。
授業が終わった瞬間、朱香(シュカ)は龍乃に駆け寄って来た。
「あぁ、お腹空いた。早速中庭行こうか」
龍乃は腹を押さえながら応える。
龍乃は長く艶のある黒い髪を高いところでひとつに縛っていた。
「早く早く!」
「朱香、急ぎ過ぎ。」
龍乃を急かす朱香を見て、銀髪の少年が淡々とした物言いで言う。
少女と見紛う、引き込まれそうな美少年である。またそれだけに迫力もある。そして彼にも、朱香同様白い宝玉を付けた四本のブレスレットが左手首で光っている。
朱香はそれを気にするでもなく、準備が整ったとばかりに教室のドアを示す。
「さ、白夜(ビャクヤ)も、行きましょ」
それを号令に、三人はそれぞれの弁当を持って教室を出ていった。
中庭は春の暖かな陽気に包まれている。
龍乃達三人は中庭の芝生の上にシートを広げて座っている。そこへ二人の男子が近付いて来る。
一人は優しい顔立ちの明るい茶髪の青年。もう一人はがっしりした体格に短い黒髪の、それでいて日だまりのような暖かみのある青年である。
「蓮、岳志(タケシ)、早く!」
朱香が二人に声をかける。
蓮の左手首にも五本の黄色い宝玉のブレスレットが、岳志の右手首には緑の四本のブレスレットが太陽の光を反射している。
「今日は随分早かったね。僕らも早めに来たのに」
蓮は優しげな笑みを浮かべている。
「朱香がね。龍乃を急かして来たんだ。」
「早く早くってさ」
白夜と龍乃は朱香をからかうように蓮と岳志に説明する。
朱香はそれを笑顔で流して蓮と岳志を座るように促す。
「そうか」と龍乃と白夜に応えながら岳志は、朱香の隣に座る。蓮はその隣、龍乃との間に座った。それがいつもの定位置だ。
そしてそれぞれの弁当を楽しく食べ始める。
それぞれの手首でブレスレットを光らせて。
当然、龍乃の手首でも青い宝玉を付けた銀色が光っていた。
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