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3章 作戦
龍乃が言ったように四神のメンバーはまた襲われた。
それも喧嘩を苦手、または嫌いという者から順々に、である。――元々『四神』は不良グループと言っても基本的に喧嘩や非行はしない。なので喧嘩に向かない者も数多くいるのである。
「どうする?」
この日も中庭で昼食をとるために集まっていた。
だが連日の事件で流石に皆、顔が暗い。なによりも怪我をした者達が気になるのだ。
龍乃の問いは、言外に事件についてだと告げていた。
「前にも言ったけど、やられっぱなしは嫌よね。やられたからにはやり返さないと」
「弱い者いじめしてくれたしな。礼はちゃんとしねぇと」
朱香と岳志は反撃を匂わせる。それには誰も異論を唱えない。皆同じ思いなのだ。
「皆の証言ではたぶん同一のグループだよね。しかも少数。全員で来てるわけじゃないけど…手口からしても同一なのに間違いないよ。」
蓮の改めて言うと他の四人は頷く。
手口はいつも同じだった。人通りが少なく、暗い道に入ると後ろから鉄の棒で殴る。そしてすぐに逃げていくのだ。証言からして総人数はせいぜい二十人前後といったところだった。
「グループとして成り立ってるかは分からないけど、どちらにしても仲間絡みでの犯行だね」
「グループだとしたら、新参かな?『四神』を負かしたら泊がつくしな」
「そうかもね。僕達に喧嘩を打ってくるグループはなかなかいないし。どちらにしても『四神』に対する挑戦状には変わりないよ」
「まぁね。放っておくわけにはいかないのも変わらないしね」
「うん」
「で、結局どうするのよ?」
龍乃と蓮が確認し合うのを聞いて、朱香が結論を急かす。
「と、言ってもすぐ逃げてっちゃうしな」
蓮が困ったように言う。
「囮。」
「へ?」
ぽつんと白夜が言うと、全員が白夜を見る。
「俺達の誰かが囮になればいい。新参なら顔は知らないだろうし、元々他のグループで俺達の顔まで知ってるやつは少ないだろ。」
「まぁ、そうかもしれないけど…もし知ってたら?」
朱香が不安そうに問う。
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