蝸牛の時間

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次の日も、その次の日も俺はいつもと同じ通学路を通っていた。 いや、通学路は少し変わった。 俺がいつも通る花畑の道に常にあの人がいた。 毎日だ。 いつもと同じように座って花畑を見ている。 俺は、止まって彼女の顔を覗き込めるほどの勇気は持ち会わせていなかったので、いつも後ろを素通りする事しかできなかった。 朝行く時も、夕方帰る時も、彼女は常に同じようにそこにいた。 着ている着物も変わる事はなかった。 生きているのは確だ。通り過ぎる一瞬だが、鼻唄らしきものが聞こえる時もあったからだ。 どんな顔をしてどんな性格をしているのか。何故ずっと花畑を見ているのか。 家はどこなのか。そもそも家はあるのか。 そんな疑問が次々に沸いて出てくる。
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