蝸牛の時間

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彼女が花畑に座り始めて6日が経った。 その日は土曜日で、昨夜から降り始めた雨が徐々に勢いを増している朝だった。 春にもこんなに雨が降るのか、と考えながら朝食をとった。 何もする事がない…。暇だ…。 興味があるのはあの人がどんな人かという事だけ…。眠くもないのに横になりながら考えた。 『!』 俺は体を起こした。 まさか…こんな雨の中で花を見ている事はないだろう。…考え過ぎだ…。 俺はまた仰向けに寝転がったが、やっぱり気になっていた。 屋根を激しく打つ雨音が俺を急かしているようでどうにも落ち着かない。 『さすがに今日はいないだろう』と『もし居たら様子を訪ねに声を掛けられるじゃないか』という思いが交差した。 俺は傘を二本掴みとって自転車にまたがり、雨の中へと漕ぎ出した。
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