蝸牛の時間

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傘さし運転、信号無視、過剰なスピード、あの人の事しか頭にない、こんな状態でよく事故を起こさなかったものだ。 我ながら感心する。 あと一つ角を曲がればあの花畑、というところで騰がった息を調えるために一度止まった。 居てほしいような居てほしくないような訳の分からない心持ちだった。 こんな気持ちは久しぶりだ。 『居なくて当たり前だ。』と自分に言い聞かせながら平常心をとり戻した。 偶然通りかかったという顔をしながら角を曲がった。 『…!?』 本当に居た。 俺はうろたえたが、さながら自転車を停める訳にはいかなかった。 自転車のギアを一番重いのに変えてゆっくりゆっくり漕いでいった。 様々な考えが短時間で頭の中を飛び回った。 彼女に近付くにつれ、いろんな予測が駆け巡った。 そして俺は… 彼女の後ろを通り過ぎてしまった。
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