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優柔不断。
この言葉が急にのしかかってきた。
『情けない…。』と思いながら、より一層重く感じられるペダルをゆっくり漕いだ。
『いや、でも俺の姿は見られてないからもう一度通るのも可能ではないか。』
俺はそれに従う事にした。
一旦大きな道路に出て、ぐるっと回ってまた路地に入る。
当然あの人はまだそこに居た。
傘も持たず、ずぶ濡れのままだ。
「傘、使いませんか。」
俺は後ろから話しかけた。
彼女はフッと振り向いた。
「ありがとう。」
といって傘を受け取った。
彼女は、しばらく傘を見つめていたが、いじくり始めた。
ボンッ
傘がいきなり開いたのに驚いたのかびっくりした顔をした。
しばらく沈黙が漂った。
彼女は全く化粧っけのない顔をしていた。
恐らく今まで化粧はした事がないのではないか、と思うくらい自然体だった。
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