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見覚えのない風景
いつもと変わらない色の空
真っ昼間の大通りを、スーツにカバンのサラリーマン、ヒールで小走りのOL、明らかにおさぼり中な学生達が行き交う
俺だけが立ち止まり、助けを求める様な目でオロオロと辺りを見回していた
よし、時間はある、一旦頭の中を順を追って整理をしてみよう。
小、中、高、それに大学
その全てを何不自由なく、親が敷いたレールを綺麗すぎるぐらいに、更にはダイヤを崩す事無く、俺は通過して来た
時には見事な程のカットバックドロップターンも華麗に――(略
とりあえず、
俺は、やりたい事なんもなしに、なんとなく流され続けて生きてきたんだ
しかし!!
ある出来事が嫌になり、大学を辞めた今、
生きてくためにはしっかり働かなければならないのである!(残念ながら)
…その事を3.5分程思考した結果。
どうせ働くなら遊べる都会じゃー!!
とか、考えて家も逃げ出す形で都会に来たけど、仕事と住む場所見つけてなかったよ
「てへ」
あり得ない過ち、その事を考えながら一人呟き歩く、そんな俺の背中は今、負のオーラを抱えているだろう。
というか完璧に、人生という道の方向音痴
「…ふ、完璧に遭難だ」
通行人達の間からすり抜けてきた冷たい風は、俺の周りで吹き荒れる
ああ
お父様、お母様
立花洋介(20歳)は完全に今、都会で独りぼっちです。
恥ずかしげも無く祈りのポーズを大通りで堂々とやっている
そんな中、視線を感じて振り返ると目が合った
…黒猫
「チッ、」
ゴミを漁る黒猫め、見つめてたら舌打ちまでして更には路地裏へ逃げ込みやがった
もはや猫にも見捨てられた気分だ。
「お腹も空いて力が出ない…」
そしてどこかで聞いた事がある様な台詞を、洋介はポツリと溢し風の吹くままトボトボと歩きだす
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