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「なんだよ?」
俺は煙草の灰を落としながら、じっと聡子を見つめた。
強く叩きすぎたのか、火種が落ちそうになってたので灰皿の中で火種をくっつけようとしたその時だった。
「私ね、もう終わりたいんだ」
ん?と俺は言いながら火種をなんとかくっつけて、また深く煙草を吸った。
「私たち、もう終わりにしようよ。私はやっぱり女なんだよね」
男だとか女だとか、俺にとってはどうでもよかったのに。
「聡子が決める事だったらしょうがないけど…… なんで?」
悲しそうな顔をする。そんな顔、はじめて見るよ。
「やっぱりなぁ…… 孝史は男なんだよね。私を抱く時に私だけを見てない」
俺には何を言ってるのかわからなかった。
「私はさ、なんだかんだで女だから、好きじゃなきゃセックスなんてできないんだよ。阿婆擦れしてるわけじゃない。誰でも良いわけじゃない。本当は…… 割り切ってるわけでもない」
そう言うとひとすじの涙が頬をつたった。
「なにを言ってるかわかんないよ。俺たち、うまくいってるじゃん?」
俺は本当にそう思っていた。この関係は楽で居心地が良かったから。
「男っていいよね。感情が無くても気持ちよくセックスができるんだもん。私はなんだか疲れちゃったよ」
俺に聡子を愛する気持ちがあると言うとそれは嘘になる。聡子にとって都合の良い男だった俺は、本当は聡子を都合のいいセフレとしか思ってない節がある。
うつむいて泣きじゃくる聡子に声をかける事もできず、呆然と、この光景を眺めていた。
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