プロローグ

3/17
前へ
/32ページ
次へ
 仕事もないのに友人の誘いを断った次郎。 無料で食べそこなった胃袋が、ストライキ寸前でグウグウと叫びデモを起こしている。 「仕方ねえな。分かったよ。胃袋に何か入れてやるから黙れ。俺の腹よ!」 腹と会話をする次郎。それが通じたのか、黙る腹。 次郎は部屋を出て、他の利用者のいる広い部屋にやって来た。 漫画を選ぶ者を横目で見ながら、一直線にドリンクのコーナーに行く。 もちろんリアルシルバーが目的だ。 飲めば元気になれる代物だが、 糖尿病になる可能性が高い。一週間に1本が理想だろう。 だが、次郎は今日はこれで3杯めだ。 糖分だけでなく、各種の栄養も取れる為のチョイスだが、 既に限界だった。今の彼に必要なのは蛋白質。 「ねえ……あの人カッコよくない?」 次郎の瞳に輝きが宿る。 シャキンとスイッチが入ったように、顔がみるみる内に変化していく。 美形くずれの誕生だ。 すぐに顔が崩れてしまう為に、中途半端な顔だとバレてしまうのが難点だが。 「ねー! 声をかけてみようよ!」 よし来い! 来るんだ! 女子高校生でも、ミックぐらいおごってくれんだろ! 次郎は念じた。だが、その念じた顔は怖かった。 食べられそうで。その顔じゃ無理だよ。アンタ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加