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そうして女子高校生と二人きりで漫画を読む次郎。
「私の名前は愛。愛らしいの愛なの。お兄さんは?」
「俺は次男だから次郎」
と丁寧に自己紹介する女子高校生の愛に短く答える次郎。
「仕事はなんなんですか?」
その質問は次郎には禁句だ。
次郎の職業を聞いて逃げない獲物はいない。
「派遣だよ。だから金がない。金目当てなら無駄だよ。じゃな……」
そう冷めた声でそう言い、立ち上がろうとした次郎。
「待ってよ。私も金ないし、同じだよ。仲間。仲間!」
と言って慌てて次郎の手を握る愛。
「仲間だと? ふざけるな!」
荒々しく愛の柔らかい手を払いのける次郎。
その目は怒りで鈍く濁り、少し充血していた。
「な……何なの!? 仲間よ。私もバカだもん!」
愛は墓穴を掘った。時代が時代なら、無事ではすまなかっただろう。
次郎は俗に言うフダ付きのワル。
私は悪です。とフダを付けて歩いていたようなものだ。
そして大手を振って街を歩き、バイクを暴走させていた。
そんな青春を過ごした彼に若くて可能性に溢れた彼女は羨ましく眩しく見えたのだった。
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