11人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
03・共有
ココミが人魚を語る片側で喜多見は薄茶色の細い髪をなびかせながら時折海を見つめた。
人魚との出会いに始まり、とても哀しく美しい声で歌をうたいながらこの地上で暮らす為に王子様を待っていること。
魔女との約束。
日に日に話は『ココミの物語』になっていったが、自分の話に興味を持ち、静かに横で人魚姫の話を聞く男に対して「この人なら人魚姫に逢わせても良いかも」と満月の夜に聖域へと変わるこの場所への立ち入りをそっと許していた。
そして「もしかしたらこの人が人魚姫の王子様かもしれない」とさえも感じていた。
そんな思いを胸にしながら夢中で言葉を紡ぐ少女は、男がこの場所より少し高台の西に見える丘の上の病院に視線を移し目を細めぼんやりと眺める様子に気付いてはいなかった。
最初のコメントを投稿しよう!