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05・灰色の教室に咲く一輪の花
いつもの学校、いつもの教室。
灰色のビジョン。
いくつかのグループの分かれ、楽しく笑うクラスメート。
同じ格好をし、同じ言葉を使い、外れることを恐れる。
彼女たちは“的”を作ることで自分を守っていた。
山咲ココミは格好の標的であり、異質だった。
当のココミにとっては彼女たちがすべて“同じモノ”にしか見えなので、逆に外れていたほうが都合が良かった。
それにココミはひとりではなかった。
いつでも傍に人魚姫が居て、空想の中で人魚姫と会話をした。
―――私をみつけて
人魚はそう語りかける。
しかし、満月の夜なぜ会えないのか。
人魚はココミを待っているのではないのか。
いつだって脳裏に映る彼女は澄んだ瞳で語りかけるのに。
そう思うとココミの世界が周りの色に侵食され灰色になりかけたが、授業が始まり、喜多見の顔を見た瞬間、ココミの表情は花が開いたかのように明るくなり世界を色づける。
そうだ。王子様を連れて行こう。
次の満月の日、喜多見を夜の屋上へ誘うが、そこでココミにとって悲しい知らせを受けるとこになるとはこの時まだ知るよしもなかった。
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