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静璃「――香織様を貶める事は許しません!」
(声を荒げる静璃。
しかし女は表情を崩さずに薄く微笑したままである)
正座する女「ではお姫様はお殿様の教えよりも香織様の戯れ言をとお考えなのですか?」
静璃「……それは。
そうではありません。
私とて無知のままでなく外界を知らねば西園寺家に泥を塗るのではないかと……」
正座する女「お姫様が御心配せずとも必要であれば西園寺のお殿様から命が下るでしょう」
静璃「……下がりなさい。
なにも嫁ぐ前夜に話すべき事ではありませんでした。
明日にはお前ともお別れなのですから、それまでは」
正座する女「仰せの通りに」
(正座する女は手をついて頭を下げた後に襖を閉める。
残された静璃は鏡に映る自らを睨むよう目を細めて見る。
だがそれも長くは続かず、幽かな溜息の後に顔を覆う)
静璃「香織様……」
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