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(同年同日和歌山県和歌山市六十谷、西園寺家離れ。
秀雄と栗山が胡座を組み酒を飲んでいるのを壁に背を凭れさせながら香織が聞いている)
栗山「とうとう貴様も明日には御家のしきたりに身を委ねて己を棄てるというわけだ」
秀雄「仕方がないだろう。
親爺からすれば俺は商人出の成り上がりと嗤う輩を黙らせる道具、没落貴族といえど高貴の血を取り込む道具に過ぎん」
栗山「俺は俺だと云っていた貴様は何処にいったのやら。
神童と評された自慢の友も今では言い訳がましい子男よ」
香織「違いない」
(幽かな微笑をうかべて頷く香織と顔を赤らめながら酒を飲む栗山を交互に見た後、秀雄は自棄気味に酒をあおる)
秀雄「貴様らは俺の婚儀を祝いに来たのではないのか?
飲み始めてからというもの散々な云われようではないか」
栗山「飲まずして云える事か。
貴様が女であれば攫ってでも婚儀を潰しているところだ」
秀雄「莫迦を云うな。
世間を知らなんだ若造の戯れ言を理由に婚儀を潰すなど」
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