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香織「戯れ言ねえ……」
(香織の呟きは小さく、酔った二人の耳には入らない)
栗山「ほう。では貴様は世間を知ったと云いたいのか?」
秀雄「……少なくとも現実は厭というほど知ったつもりだ。
親爺の雷は幼き頃より変わらんが、手前の勝手で育てられた恩を裏切る事が如何に外道であるかは昔より判っている。
刹那的に考えると親爺の面子が為に顔も知らぬ相手を迎える事の腹立たしさは云うまでもないが、それが恩返しとなるのであればと俺は思うのだ」
栗山「それに付き合わされた相手の気持ちはどうなる」
秀雄「伊達家は再起に賭け子息を幽閉していたと聞く。
世間を外界と呼び、御家の再興だけを自らの喜びと考えるよう教育されてきたそうだ」
栗山「貴族の系までもが子を売らねばならん時代か。
戦争に負けてからの我が国は全く何もかもが腐っているな」
香織「可愛らしいお姫様だよ。
素直すぎるが、西園寺には勿体無い女だ。彼女は」
栗山「知っているのか?」
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