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東京都郊外、某所。都会とはかけ離れた半田舎の町にあるゲームセンター。
その町の音楽ゲームコーナーにて、凄まじい勢いと速さで九個のボタンを叩く一人の少女がいた。滝のように落ちてくるポップ君を意図も簡単に叩いて拾うその姿は、まさに長年叩き慣れた証拠である。
曲が終わると同時、少女の手が止まった。
「ふう…見事にスコア更新! けど、やっぱり闇妬の叩き出したスコアにはあと一歩及ばずかあ……」
額の汗を拭い、少女は携帯電話で音楽ゲーム『ポップンミュージック』のリザルト画面を撮影する。
と、その後ろにいた女性…と言っても二十歳という年齢に似つかわしくない小柄な容姿の彼女が、口を開いた。
「よし、ひか。次はニエンテEXをや…」
「出来るかぁぁぁっ!」
女性の言葉に、ひかと呼ばれた少女――ひかりは振り返りざまに裏手ツッコミを入れた。
「今のだって危ないのに、これ以上発狂ものの譜面やったら…確実に腕が死ぬ」
「いや、そこは気合いで」
「みーつん、それらが気合いでいけたら苦労しないっちゅーねん!」
確かに、三凶譜面と言われるニエンテEXが気合いで出来れば苦労はしない。
それよりあの譜面達をどう叩けと言うんだ。
自分をにこやかに見つめている女性――美土里を一瞥し、ひかりはスーパーエキストラステージに突入した。
説明が後れ馳せながら、ここは現実世界。他の異世界とは繋がりの無い、言うなれば独立した世界である。
そしてひかりと美土里もまた、この現実世界に住む何のへんてつもない短大生と専門学生なのだ。
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