【指定席】

5/7
6911人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
吹っ飛んで派手な音をたてるドアとは正反対に、足音もたてず静かに入ってくる男 ニメートル近い身長に、全身黒ずくめの服を纏った男は、ゆっくりと顔を上げる あらわになった面差しは、驚くほど端正だったが、しかしその端正な面差しが霞む程の鋭い眼光 その視線を向けられた講堂にいた生徒達は、体を硬くして固まる 一度絡めとられてしまえば、視線を外す事が出来ない 恐ろしいけれど、それだけではない、深く暗い瞳に金縛りにあったように縫い付けられるのであった 静かに講堂に入って来た男はそんな生徒達を気にする風もなく、ぐるっと講堂を見渡し、一点で視線を止めた 「……………直樹」 男の整った薄い唇から漏れた名前 まるで愛しい者を呼ぶかねように紡がれた声は、聞いている者がうっとりするような響きで、再び発せられた 「……………直樹」 静まり返った、講堂の真ん中で鞄を抱え立つ直樹に真っすぐに向けられる視線と声
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!