記憶喪失

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 気付くと周りは火の海で住宅や建物が瓦礫と化し、ただ死にたくない一心で歩き続け助けてという悲痛の声を敢えて無視しながら広場に倒れ込み、降り出した雨のお陰で全身が傷だらけで朦朧とした意識の中、雨雲から薄く見える太陽を掴もうと手を伸ばしちょうど駆け付けた若い男性に助けられた。 それが衛宮真琴にとって正義の味方になれたらと思う様なったきっかけであり10年前、イギリスの自然豊かな町が一瞬で壊滅し人口の約大半が死亡、負傷者と生存者を含め100人以下しか確認出来なかったらしい。 普通ならここで夢から覚める筈だが今回は続いているようだ。 若い男性に助けられ、教会の病室で目を覚ました真琴はあの時手を差し伸べていたら死傷者の人数も減っていたのではないか、自分が無力だったから誰1人助けられなかったのに病室で仕事をしている人達は良かったねと喜んでいる。 だからあの日、自分の心も身体も感情も全てが死んで生まれ変わった事を自覚し、そして今度は助けられなかった人達の分まで生き人の役に立ってやろうと決めたのだ。 数日後、ドアの前で怒鳴り散らしている若い女性が原因で予定より1時間も早く起きてしまった真琴は昨日読み終えたばかりの小説を本人目掛けて投げ付け、首の後ろ辺りに直撃したが非力だったのか平気な顔で遅れて来た若い男性と一緒に自分のベッドまで近寄って来た。 良く考えたら視力がまだ回復している最中だったので徐々に姿が見え両親である事が判明すると右手で2人の顔を確認した。  「お化けじゃない本物だ」 と真剣な顔で言った真琴が面白かったのか2人は腹を抱えて笑い出し、吊られて病室内の全員が笑っていたが本人は不機嫌なまま退院準備を始めて本題に入ろうとした両親に退院の事だよねと話してすぐに病室を後にした。
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